子どもが生まれたおうちに贈りたい本──心を支える2冊と、その理由
初めての子育ては、みんな初めて
知り合いに子供が生まれました。 初めて自分の子供ができたときのことを思い返しました。
生まれる前には育児体験のセミナーに参加したりしていましたが、 初めてのことだらけで、妻に言われるがまま、頼りっぱなしでふわふわと過ごしていたような気がします。今でもすごく頼りになる妻です。
いよいよ産まれ、初めて抱っこしたとき、ムチャクチャ軽くて、今にも壊れそうなくらい小さくて、危なげだったことを覚えています。 そしてその時に、自分に子どもができたのだと、現実のことなんだと実感できた気がします。 当時はとにかく心配で、赤ちゃんの突然死について聞いたりしていたので、 夜中に目を覚ますと、死んでいないか呼吸や拍動を確認したりしていました。
もちろん寝ない夜、泣き止まない夜もありました。 「なぜ泣いているのか」「なぜ寝ないのか」「このままで大丈夫なのだろうか」 答えの出ない、終わりの見えない問いかけをしながら朝を迎えることもありました。
子育ては、報われるまでに時間がかかる営み
人の脳は、「いつ終わるかわからない負荷」にとても弱いです。 ですが逆に言えば、「少しでも先が見える」「意味づけができる」だけで、脳は落ち着いてきます。
赤ちゃんは言葉を持たないので、泣くことでしか不快・不安・欲求を伝えられません。 泣くという行為は、周囲に「信じて甘えていい」相手を見つけようとしているのだそうです。 そして、泣いても抱いてもらえないことを繰り返せば、赤ちゃんは「泣いても無駄」と感じ、次第に泣かなくなっていきます。
つまり、泣いてくれる=助けを求める力がある=信頼されている証拠なのです。
お世話してくれる人(=主に母親や父親)からの繰り返しの関わりで、「この人は泣けば反応してくれる」と学習します。
これは人間関係の基盤である「愛着形成」のはじまりです。
「なぜ泣き止まないの?」と思うと、扁桃体が過敏になりストレスを強く感じます。
- 泣き止まない=信頼されている証
- 寝ない夜=一緒に時を過ごせた貴重な瞬間
- 赤ちゃんの脳が私の声を覚えてる時間かもしれない
こんな風に考えると、脳は「意味があることだ」と納得でき、ストレスも減ります。
子どもが風船を好きな理由と、大人が学べること
話は変わりますが、子どもがなぜ風船を好きなのか、考えたことはありますか?
答えはシンプル。風船には、
- ゆっくり動く
- 触ると跳ね返る
- 不規則に揺れる
- 空に飛んでいく
といった、「予測できそうでできない楽しさ」 が詰まっているんです。
これは、脳の報酬系(特にドーパミン系)が反応する「学習と遊びの境界」そのもの。
つまり、「わかりそうで、まだわからない」状態が人間にとって一番ワクワクするんです。
この仕組みは、大人も活かせます。
私たちは年齢を重ねるごとに、「正解主義」「効率重視」になりがちです。
でも、時には予測できないけど心地よいものに触れることが、脳の活性化や創造力に繋がります。
例えば:
- 読んだことのないジャンルの本を開く
- 散歩コースをあえて変えてみる
- 普段聞かない音楽をかけてみる
- 書いたことのない日記に挑戦
こうした体験は、まるで「風船を追いかける子ども」のようなワクワクを取り戻してくれます。
育児の“終わりのなさ”に前向きになるには?
育児は「正解の見えない仕事」です。しかも、頑張ってもすぐに評価されたり、報われるわけではありません。
でも、この時間はすべて、赤ちゃんの「人間としての土台づくり」に繋がっています。
それに付き合い続けることは、まさに見返りを求めない深い信頼の証です。
ここまでの話を踏まえ、私が心から思う贈りものがあります。 育児グッズはそれぞれの家族や、多くの方からいただいているかと思います。 ですので、当時の自分が読めば大きな心の支えになったであろう内容の本を贈りたいと思います。 生後3ヶ月くらいまでは「睡眠が断片的」で、まとまった読書時間は取りづらいかもしれませんが、忙しいからこそ、脳と心に余白をくれる考え方の本は価値があると思うのです。本を通じて夫婦で共通の認識が持てるかもしれません。
1. 『限りある時間の使い方』 オリバー・バークマン著
- 「時間がない」と焦る現代人に向けた、“反時間術”の書。
- 育児で「今日何もできなかった」と感じるすべての親に読んでほしい。
- 「できなかったこと」に目を向けるのではなく、「やり遂げた小さなこと」に気づかせてくれる。
時間は有限だから、全部こなそうとするより、大切なことに集中するほうが心も脳も安定します。「何もできていない」のではなく、「今、一番大切なことに集中しているだけ」。 「今この赤ちゃんといる時間」が貴重で当たり前な時間の使い方だと気づくことができると思います。

2. 『子どもへのまなざし』 佐々木正美著
- 発達心理学と実際の臨床現場の知見から、子どもとどう向き合えばいいかを温かく教えてくれるロングセラー。
- 赤ちゃんの泣き声や行動に戸惑ったとき、「この子は何を感じてるんだろう」と考える視点をくれる。
幼児期を過ぎてから読みましたが、子育てにおいてのゆるぎない真理を教えてくれます。

おわりに
赤ちゃんとの日々は、驚きや戸惑いに満ちていて、 ときには「終わりがないような毎日」と感じるかもしれません。 けれどその中で、少しずつ「あなたに出会えてよかった」と思える瞬間が増えていきます。
子どもが好きな風船のように、私たち大人も「変化」や「ふれあい」に惹かれます。
人の脳は、予測できないことや感情の動きに反応して、喜びを感じるようにできているのです。
だからこそ、赤ちゃんといる時間を「意味ある時間」として捉える視点を、大人自身が持つことはとても大切です。
「赤ちゃんとの時間が、穏やかであたたかなものになりますように。」
そんな願いを込めて、本を贈ろうと思います。